「もの・こと・ひと」vol.4

観察する人のイラスト

『モノづくり』で大切なこと~【観察編】~

こんにちは。前回は「継続力」についてお話しさせて頂きました。
何事も続けることは難しいですよね。
でも続けることで多くの結果とヒラメキが見えてきます。
是非「継続は力なり」。できることからチャレンジして下さい。
と言うことで、皆様にとって何か参考になったことがあったのなら嬉しいです。
今回は「観察力」の必要性についてお話させて頂きます。

観察によって得られる大切なもの

デザイナーという仕事は、クライアントが望む商品を具体的に形にするための設計図を描く仕事です。
より良い設計図を描くためには、日々色々なところに意識を働かせ、物事を観察し続けることが必要不可欠です。
これはデザイナーが設計図を描くうえで、最も必要な「情報」と「技術」は観察によって得られると思っているからです。
この二つがあってこそ、はじめてより良い設計図を描くことができるのです。

ここでいう「情報」とは、クライアントのニーズを知るため重要なワードの集合体です。
クライアントが望むものは何か?
また満足するものはどのようなものか?
これらの答えは、すべてクライアントのワードから導かれます。
だから私は、まずクライアントのお話をじっくり伺います。

信頼を得るコミュケーション

私のショップのご相談スタイル実例をお話します。
お客様のご相談はショップご来店でと、必ずお願いしています。初回からご自宅訪問は致しません。
お客様にはまず、店舗やデザイナーのスタイルを知って頂き、私たちの「安心できる情報」を入手してもらいたいからです。
というのも私たちは今後、お客様の個人情報や家庭事情を知る人となりますから、まず私たちを信頼するに値する人であることを確信していただかなくてはなりません。

大半のお客様は、ワクワクする想いや不安な想いを「聞いてほしい!」とご来店されます。
お客様の想いをしっかり聞き取り、以後「受け止めるべき情報」を入手しなければなりません。
まず、専任デザイナーがご相談のお時間をじっくり頂き、お話をお伺いします。
短くて1時間。長い方は6時間くらいでしょうか。
お話の中盤を超える時間帯からは、なぜ?なぜ?どうして? とお客様のお話の核になっているものは一体なんだろうと、お話を伺いながら考えます。この時間がとても重要です。

なぜ?と質問すると何らかの回答が帰ってくる。
その答えの中に問題点が見える。
すると対応策が浮かぶ。
そうして対応策のお話をするとさらにどんどんお話が充実し進む。
こんな感じでコミュニケーションがうまく進むと、ご相談者様も不安要素が徐々に薄れていき、今度は期待に変わってきます。
その変化が見えてくれば、こちらも楽しくなってきますよね。
提案する側。提案を受ける側。
この初回の対面がとても重要なのです。

現地確認は必ずしも必要ではない?

多くの依頼者様は、デザイナーさんにはまず現地を見てもらわないとわからないと思い、訪問してくださいと依頼されてませんか?
そして、多くの提案者様は、お客様からご相談があると、まずは現地確認をしないとイメージがわかないと思っていませんか?

本当に現地確認とご要望だけで、資料を提示したり依頼をしたり出来る程の「情報」を得られたといえるのでしょうか?私はこの方法をお薦め致しません。
是非、現地にお伺いするまでに依頼者とじっくりお話をされて、多くの「受け止めるべき情報」を共有してから「現地情報」を共有してください。
このことで両者の距離感は縮まり信頼関係が強くなり、素晴らしい提案が生まれると思います。
「真の情報」をしっかり掴むことが本当に大切なのです。

見えないものの伝え方

このようにして「情報」を掴み、対策を考え、提案内容を依頼者にわかりやすく伝えなければなりません。
この伝え方は、人それぞれのやり方があろうかと思います。
確かに簡単なものはありません。
でも得意な方法で伝えることができると成功率が高いでしょう。
落語家のように、語るだけでその情景を描いてみせる話術の持ち主もいます。
私は、おしゃべり上手ではありませんので、仕事以外でも図や絵を書いて人に伝えることが多いです。

このイメージを伝えるためのスケッチやパースといった手法は、前々回『基本』テーマでお話しましたデッサン力という「基礎技術」を必要とします。
この「技術」を磨くためには、何よりまず自分の手で描くこと、そして他を真似をすること。
どれだけ著名なデザイナーも新たなデザインを世に生み出す時、必ず世にある何かにインスパイアされています。

ダニ・カラヴァンがデザイン監修を行った『室生山上公園芸術の森』
鉄錆の効いた外構
蓮尾が創ったオープン外構。

特に自分の型とは違っているタイプのものや未経験なことは遠ざかりがちですが、はじめの一歩をまず真似ることから始めると身につきやすく、そして新たな発見が生まれ、新たな「技術」となります。

また、アイデアやヒラメキという欲しい=人を惹きつけることのできる「技術」の向上のために私が心がけていることは、現在進行形の現場を見ること。
世にある建築物や空間を観察し、感性を研鑽すること。などなど。
また、昨日得た「情報」も日々更新されますので「技術」ために日々の努力継続も肝心です。

このように、新たなものを生み出すデザイナーは、常にいろんな「もの・こと・ひと」を観察し研鑽し、必要とされ望まれる商品を提供しなくてはなりません。
また提供する側、提案を受ける側、共にその商品価値が分かると、納得・安心・喜びに繋がることだと思います。